SNSの流行によって薄毛に悩む若者たちの「薄毛経済」

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SNSの露出アップで目立つ薄毛に悩む若者

写真を撮った時、自分の髪の毛が薄いなとショックを受ける経験をしたという人はいるだろうか。
現在、中国では20代の若者が、この「薄毛問題」に直面している。

中国青年報は、20歳を過ぎた3年ほど前から薄毛を気にするようになったという、95後(1995年~1999年生まれ)のとある大学院生女性の薄毛について報じた。彼女は、漢方から洋薬までいろいろと試してはいるものの、髪は日を追うごとに少なくなっているのだという。

最近になって美容師から勧めで、長年にわたり伸ばしてきたロングヘアをショートヘアにしたそうだ。これによって抜け毛の抑制を図っているというが、どこまで効果があるのかわからない。

阿里健康(アリヘルス)が発表した「薄毛傾向を防ぐための白書」によると、アリババの小売プラットフォームで植毛・ヘアケア関連製品を購入した消費者のうち、90後(1990年代生まれ)が36.1%を占め、80後(1980年代生まれ)の38.5%に迫っているとのことだ。

また、「2019年更美AI全国顔面偏差値図鑑」によると、回答した1990年代生まれの7割以上が薄毛に悩んでおり、北京、深セン、広州、重慶、上海は、植毛関連製品を「クリック」する消費者が特に多かったようだ。

都市部でよく見られるヘアケア・育毛関連商品が商品棚やショッピングカートに山積みになっている状態や、「薄毛対策」に関する広告がインターネットや街頭などの至るところにあるのは、それだけ悩んでいる層が多い証明だ。

こうして、「薄毛経済」の確立に至り、一部の医療・美容プラットフォームでは薄毛治療プログラムも打ち出すまでになっている。

前述の女性は、シャンプーをするたびに髪の毛が大量に抜けるそうだ。
さまざまな薄毛対策や育毛の製品を購入し、「どれかはきっと効くに違いない」と思いながらもとっかえひっかえ使用しているとのことだ。

きっかけは、久々に再会した友人から言われた「髪の毛がすごく減ってない?」の一言だそうだ。

SNSの流行によって、1990年代生まれの彼女は「髪に対する悩み」により注目するようになった。微信(WeChat)のソーシャル機能「モーメンツ(朋友圏)」に自撮り画像を投稿するのが好きだったが、深刻な抜け毛によりSNSを利用することが怖くなってしまい、「モーメンツ」の更新もストップした。

さらに、ある面接試験で面接官から、業務に関する質問ではなく「生え際」がいつ頃から後退したのかと質問され、面接官の「ちょっと違った関心」に打ちのめされてしまったという。

医師から「ミネラル不足による抜け毛」と診断され、1千元(1元は約15.4円)以上する薬で治療しながら、育毛剤も併用し、200元以上もする「抜け毛防止マッサージブラシ」を使っているという大学院生もいる。

ネット上では「髪の悩み」をネタにした投稿も後を絶たない。
今年大学に入学したばかり学生の中には、「卒業時にハゲになっていたらどうしよう」と心配する者もおり、「大学院に進学するかどうかは、ハゲになっているかどうかで決まる」と冗談めかしてコメントしている。

薄毛の人々の共通ニーズから、ヘアケア産業の誕生が促され、シャンプー・リンス、健康食品、物理療法、医療・美容、電子商取引などさまざまな業態が網羅されており、とりわけ、養毛ケア、植毛機関、かつら産業といった業界の急成長を後押しした。

中国中医科学院整形外科の蒋文傑副主任は、「若い人の薄毛は、主に、アンドロゲンという男性ホルモンに関係しており、不眠や仕事のストレスが主な原因となっている。さらに、スマホを長時間使用していることも関係している」と指摘している。

続けて「我々のところに治療にやって来るのは、80後と90後の患者が多い。最も高額の全体植毛は36万元かかり、施術後もケアが必要な場合、総費用は約50万元に上る。毛根1つにつき髪の毛は1本から4本となるので、平均すると髪の毛1本で25元ほどかかる」と述べた。

市販の育毛製品は「純天然植物成分使用」を謳っていながら、その成分を見てみると、グリセリンや第四級アンモニウム塩といった化学成分が連なる。

前述の大学院生は、市販のものの効果を感じることができず、病院に訪れ、内服薬よりも副作用が少ないとされる外用薬を処方してもらい、治療しているようだ。

SNSの普及、経済状況の変化が、思わぬところで作用した悩みである。

参考: http://j.people.com.cn/n3/2019/1030/c94475-9627930-2.html