中国で増えるデジタル遺産の実態

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1990年以降に生まれた中国人に浸透するデジタル遺産

中国の工人日報が、先日、1990年代生まれのeスポーツ選手が、バラエティ番組の中で自分の遺言状を作成し、支付宝(アリペイ)やゲームのアカウントといったバーチャル資産を書き込んだことが注目を集めたことを報じた。

遺言状サービスを提供する中華遺嘱庫のデータによると、2019年8月末現在で、1990年以降に生まれた人の遺言状を作成した人数は236人にのぼり、最年少は18歳だという。

1990年代以降に生まれた人の遺産は、現金預金とバーチャル資産が中心で、バーチャル資産には支付宝、仮想通貨、ゲームのアカウントなどが含まれ、相続人は両親というケースがほとんどだという。

第44回「中国インターネット発展状況統計報告」によると、2019年6月末現在、中国のネットユーザーは8億5400万人の規模に達したとされている。

デジタル遺産による仮想通貨やSNSアカウントの相続

2003年、すでに国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が「デジタル文化遺産保存憲章」の中でデジタル遺産を次のように明確に定義している。

「デジタル遺産は、人類が有する特有な知識と表現から成る。デジタル遺産は、文化、教育、学術、行政に関する情報にだけでなく、技術、法律、医学の分野などでデジタル形式により作成された様々の情報、又は既存のアナログよりデジタル方式に転換されたものを包含する」

学会では一般的に、デジタル遺産は物質類と精神類の2種類に分けられるとされる。物質類のデジタル遺産とは資産と直接関わりがあるものを指し、例を挙げると支付宝の残高、ビットコインなどの仮想通貨などが該当する。

精神類のデジタル遺産とは、SNSのアカウントや個人の記したテキストなど、ユーザーが多くの時間と労力を費やして形成されたバーチャル資産のことである。これらは、ユーザーの日常生活における心のふるさとであり、相続した親族にとっての精神的ななぐさめ、いわゆる形見の一つとなる。

デジタルがもたらす、仮想通貨やSNSのアカウントへの価値観、存在意義の変化は今後も続きそうだ。

参考: http://j.people.com.cn/n3/2019/1120/c94476-9633946-2.html