地方創生に向けインバウンド誘致に取り組む地方自治体

1672

地方の特性を生かしたインバウンド誘致

平和を祈る広島県

今季の広島東洋カープは、4連覇に向け奔走したが達成には至らず、クライマックスシリーズ進出も逃し、3連覇から一転、Bクラスに転落してしまった。
しかし、シーズンの結果はともあれ、今年も8月6日のマツダスタジアムでは「ピースナイター」が開催され、平和への祈りがささげられた。



日本への訪日=中国を度外視・日本で最も欧米の訪日客が集う県

広島県といえばお好み焼き、牡蠣、もみじ饅頭とグルメ人気の町でも知られている。
だが、それ以上に広島は戦争の悲惨さと平和を願う町なのだ。
世界遺産の「原爆ドーム・平和記念公園」がその象徴といえるだろう。
欧米圏の訪日客は、この戦争の歴史に関心を寄せているのだ。

訪日外国人3年連続100万人を超える広島県は、訪日外国人のうち中国などの東アジアの国が圧倒的な割合を占める他の都道府県と違い、アメリカを筆頭にオーストラリア、カナダの欧米諸国が占める割合が大きい。
オバマ前大統領の訪日演説なども、その要因の一つかもしれない。

この欧米圏からの関心の高さを活用し、広島県は 2016年度から、アメリカ、フランス、オーストラリア、中国、香港、台湾、韓国、タイの8ヶ国に積極的なプロモーションをしている。

これに加え、海外から広島空港への直行便や、現地観光スポットへの路面電車によるアクセスなど、交通の便にも優れていることがインバウンド誘致成功につながっている。

もう一つの世界遺産

広島県には「原爆ドーム」の他に、「宮島・厳島神社」という世界遺産がある。
「厳島神社」の朱色の大鳥居は訪日外国人からも人気で、TripAdvisorでも人気観光地ランキング上位にランクインしている。

ここでは、無料Wi-Fiの整備、外国人スタッフによるパンフレットの配布、両替所の設置なども進めており、訪日外国人客の受け入れ態勢もしっかり整えられている。

日本初の海峡横断した自転車道

しまなみ海道の「サイクリングロード」は日本初の海峡横断可能な自転車道として有名で、尾道ラーメンで人気の広島県尾道市から愛媛県今治市を結ぶ全長約60㎞の海上道路だ。

サイクリストの聖地ともいわれるしまなみ海道は、CNNで「世界7大サイクリングロード」として紹介もされている。

今年、広島カープを引退し駐米スカウトに就任した「愛され助っ人・エルドレッド」選手も自転車通勤していたことから、欧米人の自転車文化も窺える。
余談ではあるが、エルドレッド氏の愛用していた自転車は155万円で落札されたそうだ。

このように広島県では、歴史、世界遺産、アクセスなどを有効活用し、インバウンド誘致都市として成長している。
Webサイト「VISIT HIROSHIMA」を運営し、英語、フランス語、韓国語、中国語などの言語対応化を進めた情報配信など、積極的な取り組みがなされている。

この他にも映画「ウルヴァリン」の撮影地となった鞆の浦など、今後のインバウンド誘致が楽しみな場所もたくさんある。

資料: https://honichi.com/news/2019/08/14/hiroshimaxinbound/

広島・岡山の観光ルートも存在する同県の取り組みは、地方誘致に取り組もうとするときに、非常に参考になる事例だといえる。



多言語情報配信・台湾人に人気がある岡山県

桃太郎の町・岡山県は、今や台湾から人気のインバウンド誘致の町になっている。
2016年の訪日外国人は前年比140.7%で、訪日台湾人に限っては前年比212.2%と大幅伸長した。

この岡山県の台湾人気は、主に3つの施策にある。

TripAdvisorの口コミ多言語情報配信

「おかやま観光コンベンション協会」は、多言語化された情報配信に努めた。
県の観光スポットや観光モデルコース、グルメ、宿泊施設情報などを日本語・英語・簡体字・繁体字・韓国語に対応させ、観光資材を海外にアピールすることで観光スポットとしての認知度を高めコンバージョンにつながったのだ。

現に世界最大の口コミサイトTripAdvisorでは、「後楽園」「岡山城」の高評価レビューが寄せられている。

商店街の免税カウンター設置

岡山県には、表町商店街とロマンチック通り商店街という人気の商店街があり、2015年5月28日より免税カウンターが設置された。
表町商店街のホームページでは、英語・繁体字・簡体字・タイ語の4ヶ国語配信がされていて、訪日外国人が免税手続きに関する情報を簡単に知ることができるよう配慮されている。

台湾直行便の就航

台湾人気の一番大きな要因は、タイガーエア台湾(LCC)の「岡山-台北線」の就航ではないだろうか。
旅行者の心理として、旅行先候補に直行便があるかないかは大きなポイントになるのは言うまでもない。

資料: https://honichi.com/news/2017/01/31/chihoyuchizennenhi140/

強み(観光資材・直行便)にプラスαの心遣い(多言語化・免税カウンター設置)がインバウンド誘致につながった、とても勉強になる事例の一つだ。