年収数億円のゲームマスターたち
中国の専門職となった「eスポーツ選手」
皆さんはオンラインゲームで生計を立てる人たちをどう見るだろうか?
「ゲーム中毒」や「オタク」というイメージを少なからず持つかもしれないが、彼らは歴とした競技者なのだ。
そもそもオタク文化が浸透してきた現代、eスポーツ選手の捉え方が変わるのは至極当然のことである。
2019年1月25日、中国で「eスポーツ選手(esports professional)」及び「eスポーツ運営者(esports operator)」が正式な専門職として認定された。
2019年4月10日には、「体育産業統計分類」と発表され、eスポーツ関連のイベントは、正式にプロスポーツイベントと認められた。
中国は世界的に見てもeスポーツ大国で、その市場規模は米国に次いで世界2位である。
競技人口は2億5,000万人で世界の64%(2018年時点)を占め、視聴者数も世界全体の64%(2017年時点)のシェアを持ち世界最大数だ。
規格外の数字を誇る中国eスポーツ界だが、決して国内の風当たりが良いわけではない。
中国はもともと、スポーツなどの課外活動自体にネガティブな印象があり、「課外活動をする暇があれば勉強しろ」という文化なのだ。
だから、今回のeスポーツの専門職認定は、中国のこれまでの文化を覆す大きな前進だったのだ。
日本でも、一昔前は「オタク」というとネガティブなイメージで、「そんな暇があればもっと他のことをしろ」という風潮だったが、今は一文化として浸透している。
未だ批判的な意見はあるものの、これは大きな変化だった。
筆者も例外なくゲーム好きで、そういう文化の浸透はありがたかった。
また、そのおかげで日本の「オタク産業」目的の訪日外国人も増え、日本経済の幅が広がった。
今回の一件で、中国のeスポーツ界の成長の幅はさらに広がり、今後も新たな変化が期待される。
日本でも、eスポーツの理解を深めてもらいたいものだ。
eスポーツの可能性と課題
市場規模が年々拡大しているeスポーツ業界だが、世界の1,2位の市場規模を誇る米国、中国でさえ2022年には現在の2倍の市場規模になる事が予想され、まだまだ可能性に満ち溢れている。
五輪の正式種目としての可能性もあり、日本でも法改正や認知・理解の深まりで、市場が発達することが考えられている。
オンラインゲームによるグローバル化で、世界の新しい未来が待っている…そんな明るい未来を想像するが、もちろん課題もある。
それは、オンラインゲームの課金に伴う金銭絡みの犯罪や、日常生活に大きな支障をきたしWHO(世界保健機関)認定の「ゲーム障害」になりうるリスク、ゲームのやりすぎと親から叱られ自殺など、小さいことから死亡につながる大きなことまで様々だ。
中国では、eスポーツとオンラインゲームを「全くの別物」と捉え、eスポーツは「思考力、反射神経、協調性、強い意志、競争心、危機管理能力、チームワークなどを高め、観衆を楽しませ、啓発する」ものだと、健全な協議であるとの見解を示している。
日本でも親が子供に対して「ゲームのやりすぎはいけません」と言うように、中国でも、その考え方は変わらず、むしろ日本より強い。
その中で、「eスポーツだけは健全である」という立場の確立は様々な規制や管理を要するだろう。
また、腕があれば、まだ10代という少年少女でも、年に数億円稼いでしまい、金銭トラブルや管理などに不安が残ることも間違いない。
近年、YouTuberが夢のある職業として日本でも物議を醸したが、eスポーツでも同様のことが考えられる。
成長・拡大や活動推進と同時に規制や管理、法改正や見直しが必要になってくるのは、eスポーツ業界のこれからのジレンマである。
しかし、その未来に新たな可能性が秘められているのであれば、リスクはあれど一歩踏み出し、時代を先へと進めていく意義があるのではないかと筆者は考える。
eスポーツの明るい未来が見れることに、大いに期待だ。