多言語対応で訪日外国人を獲得した高山市と香川県
1本3分完結の動画と多言語MAPを駆使する岐阜県高山市
別名「飛騨の小京都」と呼ばれる岐阜県高山市
岐阜県高山市とは、 江戸時代の城下町や商家がそのまま残っており、歴史を感じることのできる市町村である。
1986年に国際観光モデル地区に指定されてから、他の地域に先駆けて多言語化やバリアフリーを実現し、現在、人口9万人に対し5倍以上相当の年間46万人の外国人が宿泊するようになったインバウンド誘致に成功した町である。
高山市はどのようにして、これだけのインバウンド誘致ができるようになったのだろうか。
高山市のインバウンド誘致成功への戦略
JR高山本線で名古屋、金沢、富山につながり、関東と関西を結ぶ「ゴールデンルート」の経由地として機能する高山市は、その立地を活かして周辺地域との連携を図った。
公共交通機関が発達しておらず、JRから外れている地域とは、高山市を含めた観光ルートを設置することを提案し、バス会社と提携したツアーを企画した。
動画やMAP・パンフレットを駆使したPRも欠かさなかった。
地元企業と協力し、国・地域別に馴染みやすい表紙やコンテンツに変えた多言語MAPやパンフレットを作成した。訪日する外国人が資料を見やすい環境を整えたのだ。
また、1本で完結する3分動画をYouTubeで配信し、訪日客視点に立って高山市の魅力が、外国人にも伝わりやすいよう工夫が施された。
3分という手軽に見ることのできる短さも、積極的な動画の視聴を促したと考えられる。
さらに「外国人が一人歩きできる街づくり」というコンセプトを掲げ、無料Wi-Fiの整備等に注力した。
多言語化やWi-Fiの整備は基本のように感じるが、これができている地方は少なく、非常に大切な取り組みであることは言うまでもない。
無料Wi-Fiは、訪日外国人がメールアドレスを登録することで7日間インターネットが無料で接続可能できるというシステムで、1週間以内の旅行がほとんどだという面からみても、効果的な取り組みではないだろうか。
そして、極み付きは日本特有の「おもてなし」だ。
訪日外国人たちにレストランで「食」だけでなく、おもてなしもしっかり提供したのだ。
訪日外国人によく利用されている『Trip Adviser』に多くの口コミと評価を投稿され、同サービスが発表した「外国人に人気の日本のレストランランキング2016」では、飛騨高山の2店舗がBEST5にランクインした。
有名な高級店を抑え、同地域だけで2店舗もランクインするとはすごいことである。
- 平安楽(岐阜県高山市)
- クマ カフェ(大阪府大阪市)
- 餃々 三条木屋町店(京都府京都市)
- アラシのキッチン(京都府京都市)
- タイ料理 タニャポーン(岐阜県高山市)
1位の平安楽は普通の中華料理屋にも関わらず、口コミでは「最高のおもてなしを受けた」というような投稿が多く、「食」だけでなく「おもてなし」が訪日外国人に求められていることが窺えた。
そういった訪日客のニーズを捉えた戦略が、高山市のインバウンド成功に結び付いたのだろう。
出典:http://kankou.city.takayama.lg.jp/
インバウンド事業は伸ばしても、うどんは伸ばさないうどん県・香川。
リピーターという強み
インバウンド事業で241%(2016年)全国1位の伸び率を記録した香川県。
この伸び率を支えたのは一体何だったのだろうか。
まず、その強さはリピーターにあるのではないだろうか。
香川県の訪日外国人は、約8割が台湾を筆頭としたアジア圏で構成されており、その約6割はリピーターが占めている。訪日回数が多いコア層は、地方独自に存在する固有の文化や景観に惹かれているのだ。
これが「モノ消費からコト消費へ」の変遷だろう。リピートする訪日客は「体験」することへの思いが強い傾向にある。
うどん県キャンペーン
言わずと知れた香川県の名産品のうどん。
このうどんを生かした「うどん県」キャンペーンでは、多言語対応したホームページを立ち上げ、訪日への意欲、特に香川県のうどんに興味がある外国人が閲覧しやすい環境を作ったのだ。
また、YouTubeを活用した関連イベントのPRや豊富な写真掲載を掲載することによって、キャンペーン参加への意欲を掻き立てた。
訪日外国人にとって分かりやすく、使いやすいレイアウト設計をしたことにより、リピーター獲得やインバウンド事業伸び率1位につながったのは間違いない。
瀬戸内国際芸術祭
3年に1度、香川県で開催されている現代アートの祭典で、瀬戸内海に浮かぶ14の島々を会場とし、春・夏・秋に執り行わている。
フェリーで島を巡りながら、現代アートを楽しめる芸術祭という、他にはない独特の祭りの文化が多くの外国人が参加を呼び込んでいる。
香川県といえばうどんというイメージに+αをもたらし、香川県のインバウンド誘致成功の大きな要因となったのだ。
ビジュアルにこだわる
多言語化も大切。それ以上のビジュアルのインパクト。
文字を読むのが煩わしい。
そんなことは日本人だけでなく、外国人も感じる感情の1つである。
多言語化され丁寧に説明がしてあると、それだけ訪日外国人も関心を持ってくれる。
しかしそれ以上に、見た目のインパクト、一瞬でわかる魅力というものは関心を持ってもらいやすい。
「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、視覚が与える影響はかなり大きいものである。
PRを行う際には、一枚の写真や短い動画に「本当に伝えたい魅力」を凝縮して作成することが最も効果が出やすい方法だろう。
もちろん多言語化などの配慮も忘れてはいけないが、「ビジュアルにこだわる」ことの価値は間違いなく一番だろう。